キャリア理論

「キャリアプラン通り」を、手放してもいいかもしれない

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「あなたの5年後のキャリアプランを聞かせてください」

面接、人事評価、自己啓発本、キャリア研修。私たちは何度この問いを投げかけられてきたでしょうか。そして何度、その問いの前で言葉に詰まったでしょうか。

「3年後に管理職になって、5年後にはチームを率いて、10年後には……」

そう書ける人ばかりではないはずです。それでも”プランを持つこと”が前提とされる空気の中で、私たちは少しずつ疲れていきます。

今日は、そんな”プラン疲れ”の私たちに、少し別の地図を渡してくれる理論をご紹介します。


「キャリアプラン通り」の人なんて、本当はいない

ふと立ち止まって、自分のこれまでを振り返ってみてください。

新卒で入った会社で、当時思い描いていた通りに進んでいる方は、どれくらいいるでしょうか。

異動、転職、結婚、出産、介護、思いがけない出会い、思いがけない別れ。10年・20年と働く中で、当初の”プラン”は何度も書き換えられてきたはずです。

それは決して、あなたの計画性が足りなかったからではありません。

**人生もキャリアも、そもそも「変化するもの」**だからです。

それなのに私たちは、「変化に揺れない、確かなキャリアプラン」を持つことを求められてきました。そして、それを持てない自分を「ダメな自分」として責めてきた人も少なくないと思います。


プロティアン・キャリアという考え方

1976年、アメリカの心理学者 ダグラス・T・ホール が提唱したキャリア理論があります。それが 「プロティアン・キャリア(Protean Career)」 です。

「プロティアン」という言葉は、ギリシャ神話の海神 プロテウス に由来します。プロテウスは状況に応じて自在に姿を変えられる神様で、知性と先見の明を持つ存在として描かれていました。

ホールは、これからの時代のキャリアを「プロテウスのように、変化する自分でいいのだ」と捉え直しました。一直線の階段を登るような従来のキャリア観に対する、まったく新しい提案でした。

プロティアン・キャリアの核には、こんな考え方があります。

キャリアは、組織のものではなく、あなた自身のものである。

「会社が用意した道」ではなく「自分が選び、自分が舵を取る道」。それがプロティアン的なキャリアの出発点です。


“伝統的キャリア”とは、何が違うのか

伝統的キャリアプロティアン・キャリア
主体組織個人
基準昇進・昇給などの外的成功自分にとっての心理的成功
重要なのは経験・スキル・実績学び続ける力・適応する力
一直線・階段状変化・カーブ・分岐あり
会社の方針自分の価値観

両者は対立するものではなく、人生のフェーズによってどちらが強く出るかが変わるだけです。けれども、今の時代を生きる多くの人にとって、プロティアン的な視点を持つことが心理的な助けになる、というのが私の実感です。


“プラン”より大事なのは、“舵”を握ること

プロティアン・キャリアは、「無計画でいい」「行き当たりばったりでいい」という話ではありません。

大事なのは、自分の人生の舵を、自分が握っている感覚を持つこと。

会社の方針が変わっても、家族の状況が変わっても、世の中が変わっても、「次にどう動くか」を決めているのは自分だ、と思える状態。それがプロティアンの強さです。

そしてその舵を握るために必要なのが、

  • 自分の 価値観 を知っていること
  • 変化に対応する 適応力 を持っていること
  • 自分にとっての 成功 を、自分で定義できていること

の3つだと言われています。


「5年後のあなた」をもう一度、聞かれたなら

「あなたの5年後のキャリアプランを聞かせてください」

もしまた、誰かにそう聞かれたとき。

あなたは、もう少し肩の力を抜いて答えていいのかもしれません。

「分かりません。でも、今の私は、こう感じています」

それは、プランの放棄ではなく、自分の舵を握り直した人の、まっすぐな言葉です。

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